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2008/09/22

連なる祈り

| by:kanri

最上三十三観音は山形県の最上・村山地方にある観音霊場です。子年は十二支の始めの縁起がいい歳として、最上三十三観音は御開帳が行われています。

5月から先月末まで2万人くらいの人が県内外から訪れているのではないでしょうか。最上三十三観音霊場は、光姫伝説がその母体となっています。最上家のお姫様が自分に恋した武士が成敗された悲しみから、その菩提を弔うために巡礼をする。そして、その途中で身籠っている事に気づくというお話です。こうした極めて人間臭い男女関係が絡む伝説が宿っている最上三十三観音は、全国の他の札所と比べ非常に特異な霊場と云えるのではないでしょうか。その昔は、見合いや許嫁などがあり、自由に恋愛が出来ない時代でした。自分の境遇に重ね合わせて札所を回った巡礼者も多かったでしょう。云わば恋の霊場とでも言い得るかもしれません。

ともあれ、数百年人々が参拝して来た霊場は、山形に住む者であれば、祖先の誰か彼か足を運んだに違いありません。そういう意味では、最上三十三観音は先祖の足跡に出会う霊場でもあるのです。先祖から受け継がれた祈りの場で、子供たちや家族の為に祈る。そうしてまた未来へも祈りがつながって行く。霊場の巡礼は誠にありがたいものなのです。

こうした祈りの継承は、加持祈祷において極めて重要な骨組となります。そうした事に気付く事が出来れば、祈祷に携わり、時として目の当たりにする不思議もまた違った意味を持ちます。2週間という余命宣告を受けた方の加持祈祷をしたのは4年前、その方は、今は元気です。脳腫瘍で、生還は難しいと言っていた若者の病巣は消えました。病気以外にも、贈収賄の疑いで逮捕されたという方は翌日に開放されました。倒産したという経営者は、見事に会社を立ち直らせました。私はこうした不思議を自慢する為に行っているのではありません。加持祈祷は行者の力で叶えるのではありません。今、祈る以前に願主のご先祖様が、子孫としてその方の加護を願って来た祈りに連なったからこそ起こる功徳と信じております。行者は祈りの連鎖に、願主を連ねるナビゲーターです。よく自分の成功は自分の力のみで叶ったという方がおります。そういう方ほど、「祈祷が効かないのはお前が悪いんだ」などと口にします。そのような心構えの人は、先祖の祈りに連なる事の出来ず、徳も子孫に継承されません。

世の中が忙しなく、心に余裕がない時代となり、多くの人たちが祈りを忘れてしまいました。しかし、そういう方でさえ、いつかは神仏に手を合わせねばならない時が来ます。その時に、その方を祈りの連鎖の輪に連ねさせる為に、行者は自戒と精進を続けねばなりません。


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