第4回:五蘊盛空(その二)

法螺貝の音に始まる荒沢寺での勤行は荘厳な宗教儀礼だ。ロウソクの明かりが照らし出す中、行者の前に先達衆が姿を見せる。まるで花道に登場する歌舞伎役者の様に、堂内の視線を一身に集める。あの炎の揺らめきを背景に三禮する荘厳な様子は、どの様な有能な舞台演出家も真似する事は出来まい。

荒沢寺での勤行は法華経からなる法華懺法や例時作法といった経典群が中心に唱えられる。また経に止まらず神仏習合色が強い祭文も唱えられる。それらのそれぞれが独特の節を持っている。中には唄といってといっても良いほどのメロディを持つものもある。羽黒の経は実に様々な音を奏でる。

羽黒においては音は重要な要素だ。法螺貝は全ての行動の基点となる。また、勤行中には騒乱の様に雨戸が打ち鳴らされたり、火鉢に椿をくべてパチパチと音を立てたり、散杖と呼ばれる長い杖で盤を叩く音もある。これらは全て六根を清める意味があるとされる。これらの音はいつも不意に訪れる。そして我にかえる度に行者たちの精神が再生に向けてリセットされるていく。


幻想的な燈明の光り
 
「平成15年羽黒修験秋の峰」取材原稿(部分)より 

映像内容(要旨)
礼拝する先達
 
先達衆、導師、大先達とうごめく様に揺れるロウソクの明かりの中に次々と役者たちが登場する。
勢揃いした行者
 
大先達が道場を祓う床加持を行った後導師より皆に行中の心得が申し渡される。
導師 
 
導師SE
「此処は甚深秘密の道場にして…」
法の実、最後の布施
 
 
 
  
法の実、最後の布施という作法は三々九度の形を取る。
実際に酒を酌み交わす訳ではないが、皆で一体となり行に取り組む意識が生まれる。
ここで架空の上で酌み交わす酒は仏の血を意味する。
即身成仏への意識が行者に注ぎこまれていく。
固打木の作法
 
 
 
 
 
 
 
 

固打木の作法は、行者の煩悩を打ち据え、悟りへと至らしめるための重要な作法だ。
独特の足の運びは反閇といい、地に潜む魔を払い神仏の加護を得る為の大切な作法だ。

こうした修験の作法はかつては全国の修験の山々に伝わっていた。
しかし長い年月の間、行そのものに重きを置く様になりこうした作法は消え失せてしまった。
現在はかろうじて羽黒のみがタイムカプセルの様に現在に伝える貴重な宗教儀礼だ。

勤行
 
勤行が始まる。
法華懺法と例時作法と呼ばれる法華経を中心した経だ。
行者点描この独特の節回しは時にはゆっくりと、また時には早く繰り広げられる。
調べ
 

慣れない初入峰にはとてもついて行けない。

悪戦苦闘するその時、突然、道場に異変が起こる。